更新日:2020/02/28
VRとは?
VRとは、自分の周囲に映像があるように感じられるシステムのこと。視界全体に映像が見えており、左を見れば左が見え、上を見れば上が見えます。そのため、自分自身があたかもその映像の内部にいるような感覚を得られます。そこからさらに発展し、音が聞こえてくる方向も顔の向きに応じて変化したり、映像の内部を自由に移動したり、手を伸ばしてその映像内の物を動かしたりできるシステムもあります。
VRの一番の魅力は、「実際にはできないことを、あたかも現実に行なっているかのように体験できる」ということです。動画でもゲームでも「外から観ている」のではなく、「中に入り込んで体験している」ような感覚が得られるため、動画ではより多くの情報が得られ、ゲームでは桁違いのリアルさを体感できます。そのため、現実の作業の練習用に使うことも考えられているのです。
なおVRとは「Virtual Reality」の略で、「仮想現実」や、さらにわかりやすく「人工現実感」などと訳されています。
VRの仕組み
なぜ立体的に見えるの?
VRを利用するには、「VRゴーグル」という、内側にディスプレイを内蔵したゴーグルを装着します。すると視界全体に立体映像が広がり、顔を動かすとそちらを見ることができるのです。しかし、どうしてそのようなことができるのでしょうか。そもそも、見たものが立体的に感じられる大きな理由は、左右の目の位置が違うため、見えている風景が微妙に異なるからです。左目が見た風景と右目が見た風景を脳が合成して、立体的に認識しているのです。
そこで、VRを実現するには、まず映像がVR用に撮影されたものである必要があります。2台のカメラを横並びに設置して、同時に撮影します。すると、左のカメラが「左目用」、右のカメラが「右目用」の映像を撮影することになります。
このVR用映像を見るために必要なのが、スキーのゴーグルのような外観の「VRゴーグル」です。内側には2枚の小さなディスプレイが横並びで設置されており、左側は左目だけに、右側は右目だけに見えるようになっています。 VRゴーグルでVR用映像を再生すると、左目用映像が左側ディスプレイに表示され、右目用映像が右側ディスプレイに表示されます。つまり左目には左目用映像だけが、右目には右目用映像だけが見える状態になります。すると、脳はその映像を立体的に認識するため、実際に目の前にある風景のように感じるという仕組みです。
左目用の映像を左目だけで、右目用の映像を右目だけで見ることで、立体映像として見えるようになります
なぜ顔を向けた方向が見えるの?
VRでは、顔を上に向けると上方向の映像を見ることができ、下を向けば下方向の映像を見ることができます。 VR映像の撮影時には、180°や360°といった、人間の有効視野よりもずっと広い範囲を撮影しています。VRゴーグルに表示されているのは、その一部の映像だけ。人間の視野角の範囲だけが表示されています。そして、顔を少し左に動かすと、VRゴーグルに表示されている映像の範囲が少し左よりになります。それで「顔を左に動かすと左が見える」という状態になるわけです。これを実現するため、VRゴーグルの内部には、向きを感知するセンサーが内蔵されています。
たとえば、180°という広範囲で動画を撮影します。
再生時には、撮影した動画の一部、人間の視野角の範囲だけを表示します。顔が左に向いていくのを感知したら、表示範囲を左側にずらしていきます。すると、左のほうをみているように感じることができるというわけです。
なぜ音の方向を感じられるの?
人間が音の方向を感じるのは、左右の耳の聞こえ方の違いを、脳が音の方向として認識するからです。従来のステレオ音声では「左耳用」「右耳用」のマイクで別々に音を録音し、それぞれ左耳のイヤホンと右耳のイヤホンから流すことで平面的な音の方向を感じ取ることができました。 このような、一般的なステレオ音声を利用したVR映像システムも存在します。
一方、高度なVR用の音声では、より現実に近い「上下、左右、前後、奥行き」からの音を再現することが求められます。これは空間音声と呼ばれ、全方向の音を捉えられるよう多数のマイクを装備した専用の機器が発売されています。
この空間音声をVRに利用する上で重要な点は、顔を向けた方向に映像の範囲が移動した際、あわせて音の方向も移動しなければ違和感となってしまうということです。例えば、左側に立つキャラクターから話しかけられてそちらを向いた時、音声の方向もあわせて移動しないと、正面のキャラクターの声がやっぱり左側から聞こえる、という状態になってしまいます。このような事態を避ける為に、録音された音声と頭の向きを常に一致させる処理が行われているのです。
VRには「視聴型」と「参加型」がある
VR映像には、「視聴型」と「参加型」の2通りがあります。「動画」と「ゲーム」の違いといえばわかりやすいでしょうか。視聴型は、流れている映像をただ観るだけです。その中で、顔を動かして好きな方向を見ることはできます。一方、参加型は、映像内を自由に動き回ったり、なにかを触ったり動かしたりできます。それを利用した、VRゲームもあります。
なぜ触ったり動かしたりできるの?
参加型のVRでは、手にコントローラを持ちます。そのコントローラを使って、対象に触る動作や、動かす動作を行えるのです。コントローラの代わりに「一点を凝視する」といったジェスチャーで実現している場合もあります。 高度なVRでは、コントローラの動きを「手の動き」として認識できます。さらに高度なVRでは、手にコントローラを装着して「つかむ」動きを認識したり、コントローラ内のモーターで「硬さ」や「衝撃」などを感じられたりするシステムもあります。
なぜ移動できるの?
VR映像内を動き回るための基本的な方法は、コントローラです。一般的なゲームと同様、十字パッドやスティックを操作して移動するわけです。
高度なVRでは、センサーを使います。室内にセンサーを設置し、人間の動きを認識させるのです。この方式では一定のスペースが必要になりますが、人間は実際に動くことになるため、よりリアルな体験ができるというわけです。 なお、VRゴーグル内に内蔵したカメラを利用して動きを感知する、センサー設置の不要な技術もあります。
混同されやすい他のシステムとの違い
ARとの違いは?
ARは「Augmented Reality」の略で、「拡張現実」「強化現実」などと訳されます。ARも映像コンテンツですが、見えているのは実際に目の前にある風景や物。そこに、文字情報やグラフィックなどが追加で表示されるのです。
ARは、カメラとディスプレイのセットで実現します。 基本的には、ディスプレイにはカメラで映している映像が表示されます。ただし、カメラの映像は同時に解析されており、必要な情報を映像に付加するのです。 たとえば室内を撮影しつつ、空いている場所にテーブルの映像を追加して、デザインが部屋にマッチするか、大きさはちょうどいいかなどを確認することができます。
このように、ARで見えているのは基本的に目の前にある実際の映像なのです。VRとARの関係は優劣ではなく、用途の異なるまったく別のテクノロジーであるといえるでしょう。
3Dとの違いは?
現在、映画やテレビなどで提供されている「3D」も、映像を立体的に見る手法の1つです。ただし、VRとは仕組みが異なっています。
3D映像も、作成時に「左目用」「右目用」の映像を別々に撮影しておくのはVRと同じです。3Dでは、その映像を1枚のディスプレイ(映画館のスクリーンやテレビ)に表示します。目に止まらないほどの速さで、「左目用」と「右目用」を交互に表示するのです。そしてその映像を特殊なメガネ(3Dグラス)を通して見ると、左目には左目用映像だけが、右目には右目映像だけが見えるので、立体的に見えるというわけです。
このような方式なので、立体的な映像が見えているのはあくまで目の前のスクリーンやテレビのフレーム内だけ。VRのように視界いっぱいに映像が見えるわけではありません。
どんなコンテンツがある?
VR映像としてもっともポピュラーなのは、ジェットコースターではないでしょうか。まるで本物に乗っているかのようなドキドキ感を味わえます。なかなか乗れない先頭を体験することもできます。他にも、鉄道、船といった乗り物のコンテンツは数多くあります。 変わったところでは、VR映像のドラマもあります。あくまで「傍観」である従来のドラマに対し、劇中の一員であるかのような体験ができるのが大きな違いです。
ゲームも数多く存在します。たとえばアクションゲームでは、まるで本当にそこにいるかのような敵からの攻撃を動いてかわし、剣を振り下ろして斬るなど、リアルな戦闘ができます。スポーツゲームでは、スキーやゴルフ、ボウリングといったポピュラーな種目のほか、弓道やボクシングといった、なかなか体験できない種目も。また、深海を好きなようにダイビングできるゲームや、他人と一緒に暮らすシミュレーションなど、さまざまなジャンルのゲームが続々登場しています。
VRの歴史
実はVRの歴史は古く、1960年代にはすでに映像や科学技術の分野で研究が始まっていました。一般社会でVRという言葉が普及したのは、1990年代に「バーチャル」や「VR」をうたうゲームが急増した頃ではないでしょうか。ただしこの頃の「バーチャル」は、あくまで「立体的に描かれた2D映像」であり、現在のVRとはまったく異なっています。
現在の意味での「VR」が普及したのは、2014年頃にスマホを使ったVRシステムが登場したことがきっかけです。専用ゴーグルにスマホを装着することで廉価にVRを実現できるため、VRに対応した映像やゲームが急増しました。その後、家庭用ゲーム機やパソコン向けにもVR機器が続々と登場し、2016年は「VR元年」とも言われています。
さまざまな業界におけるVRの可能性
現在、VRがもっとも活用されているのは、ゲームと動画コンテンツです。しかし、「リアルな体験ができる」という特性から、そのほかの業界でも活用が期待されています。
医療
治療や手術を体験できるVRを活用すれば、実際にはできない「実地での練習」を繰り返し行なうことができます。また、治療や手術の様子をVR動画として記録しておけば、まるでその場に参加していたかのように、さまざまな角度からさまざまな部位を観察することができるわけです。
音楽鑑賞・観劇
・スポーツ観戦
ライブやスポーツにVRを活用すると、たとえば特等席にいる感覚を味わうことも可能です。通常の映像と異なるのは、好きな場所を見ることができ、また横を見れば他の観客が熱狂している、という状態であることです。また、アーティスト本人に取り付けたカメラにより、ステージからのVR映像が作られているという例もあります。まるで自分がバンドの一員でライブを行なっているような気分に浸れるというわけです。
不動産・住宅
住まい探しに欠かせない「内見」も、VRを使えば家にいながらにしてできます。キッチンからリビングの見えかた、窓からの眺望などを、自分の好きな角度で検証できるのです。 家を建てる場合には、図面から完成予想の立体CGを作成し、その中をVRで歩きまわれば、デザインや動線をリアルに検討することができるでしょう。
観光
VR映像により、現地に行かなくても観光気分を楽しむことができます。実際には入れない建物や遺跡などに入ってみる体験もできることでしょう。観光地が、実際に訪れてもらうためのアピールとしてVRコンテンツを作成することもあります。
VRを体験するには
VRを体験するにはさまざまな方法があり、かかる費用やリアルさなどが異なります。いくつかの方法を紹介しましょう。
スマホ+VRゴーグル
スマホ用のVRゴーグルを装着する方法です。家電量販店やインターネット通販などで入手できます。スマホ用のVRゴーグルは、内部にスマホをセットして、画面の半分が左目だけ、もう半分は右目だけに見えるようになっています。そして顔の向きは、スマホのセンサーを利用して判断します。
音はスマホのスピーカーを利用するか、イヤホンを内蔵したゴーグルもあります。この方法では、YouTubeなどで公開されているVR動画や、スマホ用のVRアプリを利用することができます。現在はVRゲームも多数公開されています。
ゴーグルの価格は1000円台~1万円程度と廉価なので、VRとはどんなものなのか、体験したい人におすすめの方法です。
単体のVRゴーグル
単体で装着してVRを利用できるゴーグルです。内部には2枚のディスプレイと処理用のハードウェア、そしてイヤホンが装備されている製品もあります。処理用のハードウェアはAndroidが採用されているものが多く、操作方法はスマホと似ています。いわば「スマホ+VRゴーグル」が一体になった製品ともいえますが、専用機だけあって画質はスマホ+VRゴーグルよりもはるかに良いものがほとんど。さらにはVR専用のコントローラが付属していることもあります。
YouTubeなどで公開されているVR動画やスマホ用のVRアプリ、そして専用のVRゲームやVRアプリを利用できる製品もあります。
価格は2万~5万円程度。美しい画面でVR体験をしたい人におすすめです。
PlayStation VR
家庭用ゲーム機「PlayStation4」に接続して使うVRシステム。専用カメラでプレイヤーの動きを検知し、手の動きを精密に認識してくれるコントローラもあります。
PlayStation VRでは、専用のVRゲームをプレイすることが可能。専用機だけあって、高度なゲームを高画質で楽しむことができます。もちろん、YouTubeなどのVR動画も視聴可能です。
PlayStation VRは4万円程度ですが、PS4を持っていない場合にはそちらも必要になります。
パソコン+VRゴーグル
パソコンに接続するタイプのVRゴーグルもあります。いくつかの製品があり、センサーを用いた動きの検出や、「触る」「つかむ」といった動作のできるコントローラが用意されている機種もあります。
この方式で遊べるのは、パソコン用に開発されたVRゲーム。もちろんVR動画の視聴も可能です。
VRゴーグルは6~12万円で、高速なパソコンも必要になります。しかしパソコン用VRゲームやVRソフトは非常に美しく高度で、種類も豊富。コストに見合う体験ができることうけあいです。
VRを試しに体験するには
「VRをやってみたいけど、いきなり購入するのはちょっと…」とか、「どの方法を選べばいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。そのような場合にオススメなのが、ツクモ各店舗でのVR実演コーナー。実際に体験してみてください。