8コア16スレッドで前世代を超える性能を発揮。IPCは最大で19%向上
徐々にその内容が明かされてきていたIntelの新デスクトップPC向けプロセッサー、“Rocket Lake”こと第11世代 Core プロセッサーがついに発売された。6年ぶりにアーキテクチャが刷新されたこのCPUを待ちに待ったという人も少なくないはずだ。
ロゴとともにパッケージデザインも一新
Intelは昨年10月にコーポレートロゴや「Core」ロゴを刷新しており、今回からパッケージのデザインもガラッと変更された。Core i9プロセッサーのパッケージは幾何学模様のようなクールなルックスが目を引く。
すでに明らかにされているとおり、IPC(クロックあたりの処理命令数)は最上位機種で最大19%も向上するなどパフォーマンス面の進化が進んだことに加え、PCI Expressやメモリまわりの強化、ディープラーニング関連などの命令の追加など、全体的な機能向上が進んでいる。まずはラインナップと主な強化ポイントを見ていこう。
第11世代 Intel Core プロセッサーのラインナップ
プロセッサー・ ナンバー |
コア数 | スレッド数 | 基本周波数 | 最大周波数 (TB2.0) |
最大周波数 (TBM3.0) |
オールコア 最大周波数 |
TVBT シングル/オール |
ABT 対応 |
内蔵GPU | TDP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i9-11900K | 8 | 16 | 3.5GHz | 5.1GHz | 5.2GHz | 4.7GHz | 5.3/4.8GHz | ○ | UHD 750 | 125W |
Core i9-11900KF | 8 | 16 | 3.5GHz | 5.1GHz | 5.2GHz | 4.7GHz | 5.3/4.8GHz | ○ | ― | 125W |
Core i9-11900 | 8 | 16 | 2.5GHz | 5GHz | 5.1GHz | 4.6GHz | 5.2/4.7GHz | ― | UHD 750 | 65W |
Core i9-11900F | 8 | 16 | 2.5GHz | 5GHz | 5.1GHz | 4.6GHz | 5.2/4.7GHz | ― | ― | 65W |
Core i9-11900T | 8 | 16 | 1.5GHz | 4.8GHz | 4.9GHz | 3.7GHz | ― | ― | UHD 750 | 35W |
Core i7-11700K | 8 | 16 | 3.6GHz | 4.9GHz | 5GHz | 4.6GHz | ― | ― | UHD 750 | 125W |
Core i7-11700KF | 8 | 16 | 3.6GHz | 4.9GHz | 5GHz | 4.6GHz | ― | ― | ― | 125W |
Core i7-11700 | 8 | 16 | 2.5GHz | 4.8GHz | 4.9GHz | 4.4GHz | ― | ― | UHD 750 | 65W |
Core i7-11700F | 8 | 16 | 2.5GHz | 4.8GHz | 4.9GHz | 4.4GHz | ― | ― | ― | 65W |
Core i7-11700T | 8 | 16 | 1.4GHz | 4.5GHz | 4.6GHz | 3.6GHz | ― | ― | UHD 750 | 35W |
Core i5-11600K | 6 | 12 | 3.9GHz | 4.9GHz | ― | 4.6GHz | ― | ― | UHD 750 | 125W |
Core i5-11600KF | 6 | 12 | 3.9GHz | 4.9GHz | ― | 4.6GHz | ― | ― | ― | 125W |
Core i5-11600 | 6 | 12 | 2.8GHz | 4.8GHz | ― | 4.3GHz | ― | ― | UHD 750 | 65W |
Core i5-11600T | 6 | 12 | 1.7GHz | 4.1GHz | ― | 3.5GHz | ― | ― | UHD 750 | 35W |
Core i5-11500 | 6 | 12 | 2.7GHz | 4.6GHz | ― | 4.2GHz | ― | ― | UHD 750 | 65W |
Core i5-11500T | 6 | 12 | 1.5GHz | 3.9GHz | ― | 3.4GHz | ― | ― | UHD 750 | 35W |
Core i5-11400 | 6 | 12 | 2.6GHz | 4.4GHz | ― | 4.2GHz | ― | ― | UHD 730 | 65W |
Core i5-11400F | 6 | 12 | 2.6GHz | 4.4GHz | ― | 4.2GHz | ― | ― | ― | 65W |
Core i5-11400T | 6 | 12 | 1.3GHz | 3.7GHz | ― | 3.3GHz | ― | ― | UHD 730 | 35W |
※TB2.0=Turbo Boost 2.0、TBM3.0=Turbo Boost Max 2.0、TVBT=Thermal Velocity Boost Technology、ABT=Adaptive Boost Technology |
「第11世代」として発表されたCore プロセッサーは19製品。ハイエンドのCore i9からメインストリームのCore i5までが新たに登場する。「K」型番は倍率アンロック、「F」型番は内蔵GPUなし、「T型番」は省電力タイプ、というルールはこれまで通り。Core i5-11400とCore i5-11400Tのみ、内蔵GPUがUSD 730になる。
第11世代 Core プロセッサー最大の特徴はアーキテクチャの一新だ。第10世代までは第6世代のSkylakeアーキテクチャをベースに改良を重ねてきたが、第11世代では新たなCypress Coveアーキテクチャを採用。これによりIPCを最大19%向上させることに成功した。
ラインナップは上位から順にCore i9/i7/i5/i3(エントリークラスにPentium)と展開しているのはこれまでと同様だ。ただ、第10世代では最上位のCore i9-10900Kは“10コア20スレッド”だったが、第11世代では最上位のCore i9-11900Kでも“8コア16スレッド”になった。しかし、2コア減ってもCypress Coveアーキテクチャによってトータル性能は向上している。
アーキテクチャの刷新だけでなく、最上位のCore i9-11900Kおよび11900KFには、プレミアムな追加機能として、新たなブースト機能「Adaptive Boost Technology」(以下ABT)が搭載された。第10世代のCore i9-10900Kには、状況に合わせてベースクロックから自動でクロックを向上させる機能として「Turbo Boost 2.0」(8コアすべてが対象)、「Turbo Boost Max 3.0」(2コアが対象)、「Thermal Velocity Boost」(全コアが対象)と三つのブースト機能を備えていたが、Core i9-11900Kと11900KFには四つ目が追加された形だ。
ABTは十分に強力な電力供給と冷却が確保できた場合に、複数のコアのクロックをさらに引き上げる。具体的にはプロセッサーの温度が100℃以下ならば、Turbo Boost Max 3.0対応コア以外の6コアを、Thermal Velocity Boostとの併用で最大で5.1GHzで動作させるというものだ。
Intel Adaptive Boost Technologyの効果
実際、ABTを無効(全コア4.8GHz)と有効(全コア5.1GHz)にした状態(いずれもCPU Ratio=All Coreの設定)でCGレンダリングによってCPUパワーを測るベンチマーク「CINEBENCH R23」を実行したところ、ABT有効時は無効時よりさらにスコアを伸ばしている。しっかりCPUが冷える環境であればABTの効果は大きいので、ABTをフルに活かせるように冷却環境は万全に整えて臨みたい。
PCI Expres 4.0に対応、最新ビデオカードやSSDがフルパワーを発揮!
第11世代 Core プロセッサーは新アーキテクチャの採用でさまざまな機能強化が行なわれているが、Intelでは「ゲームのためのデザイン」と明言している。実際、ゲームに大きくかかわる足回りが進化しており、一番大きいところではPCI Express 4.0への対応がある。
第11世代 Intel Core プロセッサーの構造
パフォーマンス上のボトルネックになっていたDMI 3.0は従来の4レーンから8レーンに、そしてPCI Express 4.0に対応するなど、アーキテクチャの刷新によって多くの強化が行なわれた。
第10世代 Core プロセッサーはPCI Express 3.0までの対応だった。性能への影響は小さいものの最新のビデオカードはPCI Express 4.0接続が標準化しており、Intelのデスクトップ環境での対応を求める声が大きかった。NVMe SSDもPCI Express 4.0対応のものが増えており、こちらは3.0接続では性能が十分発揮できなかっただけに、ゲームのロード時間短縮などが期待できる高速ストレージ環境を求める人にとっては朗報だ。
メモリクロックの高さが快適度に影響するゲームも存在するため、第10世代ではDDR4-2933までの対応だったメモリがDDR4-3200まで向上したのもポイントだ。CPUとビデオカードのメモリのデータ転送を効率化する「Resizable BAR」もサポートする。また、ディープラーニングを高速化するVNNIやAVX-512命令をサポートし、対応するアプリではより高速で効率的な処理が可能になるなど、ゲームを強調しつつも、オフィスワークからAI活用まで、幅広い分野でのパフォーマンス向上が期待できる進化を遂げている。
このほか、CPU内蔵のグラフィックス機能も大幅に強化。同社のTiger Lakeことノートパソコン向け第11世代 Core プロセッサーで採用された高性能なGPU「Xe Graphics」がベースになり、従来よりも約50%性能向上している。コアなゲーマーにはビデオカードが必携だが2021年3月末時点ではビデオカードが非常に品薄な状況。ライトなタイトル向きとはなるが、当面は内蔵GPUを活かして運用するという自作パソコンのプランも検討の余地はあるだろう。
内蔵GPU使用時のゲーミング性能比較
第11世代 Core プロセッサーに“完全対応”したマザーボードは、プロセッサーに先駆けて発売されている。新プロセッサーの登場をもって解禁される高速なM.2スロットやPCI Expres 4.0カードスロットなどの新機能が装備されており、第11世代 Core プロセッサーとの組み合わせにより、真のパフォーマンスが発揮される。新プロセッサーを利用した際のゲームや各種アプリケーション、ストレージの期待の性能については、別記事にて詳しくレポートするので、併せてご覧いただきたい。
お求めやすい低価格ラインは改良型第10世代にチェンジ
さて、エントリークラス向けのCore i3プロセッサー以下のラインナップは、従来の第10世代(Comet Lake)のリフレッシュ版となる全11製品が登場する。主な仕様とラインナップは下表のとおり。アーキテクチャやコア/スレッド数には変更はないが、価格はほぼ据え置きで、全体にクロックが向上している。価格を抑えたパソコン自作を検討しているなら一歩強力になったリフレッシュ版第10世代もオススメだ。
最新エントリークラス製品のラインナップ
プロセッサー・ ナンバー |
コア数 | スレッド数 | 基本周波数 | 最大周波数 (TB2.0) |
オールコア 最大周波数 |
内蔵GPU | TDP |
---|---|---|---|---|---|---|---|
i3-10325 | 4 | 8 | 3.9GHz | 4.7GHz | 4.5GHz | UHD 630 | 65W |
i3-10305 | 4 | 8 | 3.8GHz | 4.6GHz | 4.3GHz | UHD 630 | 65W |
i3-10305T | 4 | 8 | 3GHz | 4GHz | 3.7GHz | UHD 630 | 35W |
i3-10105 | 4 | 8 | 3.7GHz | 4.4GHz | 4.2GHz | UHD 630 | 65W |
i3-10105F | 4 | 8 | 3.7GHz | 4.4GHz | 4.2GHz | - | 65W |
i3-10105T | 4 | 8 | 3GHz | 3.9GHz | 3.6GHz | UHD 630 | 35W |
Pentium Gold G6605 | 2 | 4 | 4.3GHz | - | - | UHD 630 | 58W |
Pentium Gold G6505 | 2 | 4 | 4.2GHz | - | - | UHD 630 | 58W |
Pentium Gold G6505T | 2 | 4 | 3.6GHz | - | - | UHD 630 | 35W |
Pentium Gold G6405 | 2 | 4 | 4.1GHz | - | - | UHD 630 | 58W |
Pentium Gold G6405T | 2 | 4 | 3.5GHz | - | - | UHD 630 | 35W |
※TB2.0=Turbo Boost 2.0 |
前世代に比べ、Turbo Boost 2.0を含む各クロックが0.1GHzずつアップし、TDPは据え置き。