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IPC向上で基礎能力を底上げし、新ブースト機能でワンランク上の性能を達成

設計を刷新して登場したIntelの第11世代 Core プロセッサー。最上位で8コア16スレッド構成、最大5.3GHz駆動、PCI Express 4.0対応と、「ゲームのためのデザイン」にフォーカスし、ゲームをはじめとする多くのアプリケーションの性能向上効果的であるCPUコアの命令実行効率を突き詰めていると言う。本稿では、さまざまなベンチマークテストを通じて、i9-11900Kの実力をひもといていきたい。

まずは、第11世代Core i9/i7と第10世代Core i9/i7のスペックを比べてみよう。i9-11900Kは8コア16スレッドながらアーキテクチャをCypress Coveに刷新して基本性能を向上させたのに加えて、Adaptive Boost Technologyによって全コア5.1GHz動作を実現しているのが大きな特徴だ。

前世代のi9-10900Kは10コア20スレッドだが、アーキテクチャは第6世代のSkylakeベース。全コア同時の最大クロックは、Thermal Velocity Boostによる4.9GHz動作となっている。

新旧 Intel Core プロセッサーの主な仕様の比較

プロセッサー・
ナンバー
コア数 スレッド数 基本周波数 最大周波数
(TB2.0)
最大周波数
(TBM3.0)
オールコア
最大周波数
TVBT
シングル/オール
ABT
対応
内蔵GPU TDP
【第11世代】
Core i9-11900K
8 16 3.5GHz 5.1GHz 5.2GHz 4.7GHz 5.3/4.8GHz UHD 750 125W
【第10世代】
Core i9-10900K
10 20 3.7GHz 5.1GHz 5.2GHz 4.8GHz 5.3/4.9GHz UHD 630  125W
【第11世代】Core i7-11700K 8 16 3.6GHz 4.9GHz 5GHz 4.6GHz UHD 750 125W
【第10世代】Core i7-10700K 8 16 3.8GHz 5GHz 5.1GHz 4.7GHz UHD 630 125W
【第11世代】Core i5-11600K 6 12 3.9GHz 4.9GHz 4.6GHz UHD 750 125W
【第10世代】Core i5-10600K 6 12 4.1GHz 4.8GHz 4.3GHz UHD 630 125W
※TB2.0=Turbo Boost 2.0、TBM3.0=Turbo Boost Max 2.0、TVBT=Thermal Velocity Boost Technology、ABT=Adaptive Boost Technology

Core i9-11900K最大の特長は、新しいブースト機能「Adaptive Boost Technology」への対応。前世代のプロセッサーにも新世代の下位モデルにもない、“4段目のロケット”である。

それでは実際にベンチマークで性能をテストしていこう。テストに使用したプロセッサーとマザーボード、およびそのほかの構成は以下のとおりだ。Core i9-11900K使用時はマザーのUEFIでAdaptive Boost Technologyを「Enable」に設定。またどちらのCPUとも、UEFIのCPU Ratioは「All Core」に(最高クロックはCore i9-11900KはABT込みで5.1GHz、Core i9-10900Kは4.8GHz)、PowerLimit(PL1)は4096W(事実上の無制限)に設定している。

テストに使用したプロセッサー&マザーボード

Intel Core i9-11900K プロセッサー

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そのほかのパーツ構成:

比較対象プロセッサー:Intel Core i9-10900K プロセッサー(10コア20スレッド)、メモリ:Micron Crucial Ballistix RGB (PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※各CPUの定格で動作)、システムSSD:Micron Crucial P5 1TBモデル[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]、速度計測用SSD:Samsung SSD 980 Pro 1TBモデル[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]、ビデオカード:MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC(NVIDIA GeForce RTX 3070)、CPUクーラー:簡易水冷クーラー(28cmラジエータ搭載)、電源:NZXT E Series E850(850W、80PLUS Gold)、OS:Windows 10 Pro 64bit版

オフィス/クリエイティブアプリとゲームで実際の性能をチェック!!

まずは定番ベンチマーク「PCMark 10」のStandardテストでPCの総合的な性能、「Application」テストで、OfficeアプリやWebブラウザでの性能を見ていこう。

テスト1 パソコンの基本性能

テスト2 Microsoft Office/ブラウザの処理性能

Standardテストは、ビデオ会議/Webブラウジング/アプリ起動性能を見る「Essentials」、表計算/文書作成アプリ性能を見る「Productivity」、写真や映像編集時の性能を見る「Digital Content Creation」で構成されているが、全項目においてCore i9-11900Kのほうが高いスコアを出した。全コア5.1GHz動作とCypress CoveアーキテクチャによってIPC(クロックあたりの処理命令数)が最大19%向上、というのはダテではないということだろう。

Applicationsテストも同様だ。MS OfficeのWord、Excel、PowerPointおよびWebブラウザのEdgeを実際に使った処理を実行するテストだが、すべてCore i9-11900Kが上回っている。

次に、Adobeの写真編集ツールの「Lightroom Classic」と「Photoshop」、動画編集ツール「Premiere Pro」を使って処理速度を計測するベンチマーク「UL Procyon」でクリエイティブ系の処理性能も見てみよう。

テスト3 Adobe製クリエイティブアプリの処理性能

UL Procyonは画像の編集やエフェクトの追加などを行なうPhoto Editingテストと動画の編集やエフェクトの追加、エンコードなど行なうVideo Editingテストが用意されている。どちらも非常に負荷の大きいテストだが、ここでもCore i9-11900Kのスコアが上回った。Core i9-11900Kにはコア数の不利をひっくり返すだけの性能があると言ってよさそうだ。

ここからはゲーム系のテストを行なっていく。最初は3Dベンチマークの定番「3DMark」から。

テスト4 3Dゲーミングの基本性能

DirectX 11ベースのFire Strike、DirectX 12ベースのTime SpyはCPUパワーを測定するテストが含まれており、Core i9-11900Kの強さが発揮されて、Core i9-10900Kを上回った。Intelが第11世代 Core プロセッサーを「ゲームのためのデザイン」とうたう実力が垣間見える結果だ。レイトレーシング性能を測るPort Royalはビデオカードの性能でほとんど決まるため、誤差程度のスコア差となっている。

続いては実ゲームを試して見る。まずは、異種族との戦いを描く人気のTPS「Gears 5」から。画質は最高に設定し、内蔵ベンチマーク機能を使って平均フレームレートを測定している。

テスト5 実際のゲームでのフレームレート

ここでもコア数の差を乗り越えて、どの解像度でもCore i9-11900Kの平均フレームレートが上回った。ゲームでの強さはホンモノということだろう。

もう一つ、ベンチマークの大定番である「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」も試した。最高画質設定にしてフルHD/WQHD/4Kと3種類の解像度でベンチマークを実行している。

テスト6 実際のゲームでのフレームレート

ビデオカードがボトルネックになりにくいフルHD解像度では約7%、Core i9-11900Kが上回った。ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークは、メモリクロックが高いほどスコアが伸びやすい傾向にあり、単純なCPUパワーに加えて、Core i9-11900KはDDR4-3200対応、Core i9-10900KはDDR4-2933対応である点も影響していると考えられる。なお、4Kのスコア差がほとんどないのは、この解像度だとビデオカードの負荷が大きくなり、CPU性能がスコアに影響を与えにくくなるためだ。

続いて、第11世代 Core プロセッサーの大きなウリである、PCI Express 4.0対応の実力を見ておきたい。Core i9-11900KはPCI Express 4.0が20レーン用意されており、主に16レーンがビデオカード用、4レーンがNVMe SSD用となっている。ここでは、PCI Express 4.0 x4対応のNVMe SSDで、公称シーケンシャルリードが7,000MB/sに達するSamsungの「SSD 980 Pro(1TB版)」を用意。PCI Express 3.0までの対応となるCore i9-10900Kとデータ転送速度を比べてみたい。アプリはストレージの最大性能を測定できる「CrystalDiskMark 8.0.1」を使用した。

テスト7 ストレージ性能比較:Crystal Disk Mark 8.0.1

Core i9-11900K環境
Core i9-10900K環境

PCI Express 3.0 x4接続ではシーケンシャルリード(SEQ128K Q32T1)が3,561.95MB/sとインターフェースの限界にぶつかり、SSD 980 Proの性能を出し切れないのが分かる。一方のPCI Express 4.0 x4接続なら、シーケンシャルリード(SEQ128K Q32T1)は7,128.29MB/s秒と公称どおりの性能を発揮できる。ビデオカードのPCI Express 4.0対応化は現時点ではパフォーマンスへの影響はまだ限定的だが、明確にこれまで“壁”があったSSDには絶大な効果がある。

気になる温度、消費電力の傾向は?

Core i9-11900Kの性能がこれだけ高いと気になるのがプロセッサーの発熱と消費電力だろう。まずは、発熱から。負荷テストツール「OCCT 8.0.1」を使い、とくにプロセッサーに非常に高い負荷をかける「Linpack」を10分間実行したときのプロセッサー温度と動作クロックを、モニタリングツール「HWiNFO64」で測定した。

テスト8 テスト中のプロセッサー温度/クロック

Core i9-11900Kは、テスト開始と同時に全コア5.1GHz動作になるが、数秒でCPU温度は100℃に達し、全コア4.8GHz動作にクロックダウン。するとCPU温度は一気に70℃以下まで下がり、再び5.1GHzまでクロックが上昇。これを10分間繰り返した。ラジエータ28cmクラスの水冷を持ってしても、強烈な負荷時はCPU温度を100℃以下に保つのは難しい。一方Core i9-10900Kは全コア4.9GHzを安定して維持。CPU温度も最大74℃で60℃以下になることもあった。

昨今のハイエンドプロセッサーは高い冷却性能を求められるケースが多いが、Core i9-11900KでAdaptive Boost Technologyの威力を十分に発揮させたいなら、これまで以上にCPUクーラー、およびプロセッサーの足回りを強力に支える“電源回路が強力なマザーボード”を用意したい。

なお、今回はPowerLimit(PL1)を無制限に設定しているので、全コア高クロック動作を維持しているが、PowerLimit(PL1)をそれぞれのCPU標準値である125Wに設定した場合は、動作が変わる点には注意してほしい(長時間負荷が続くとクロックが下がるようになる)。

次に消費電力を見てみよう。ここではパーツごと消費電力の計測ができる電源ユニットであるNZXT E Series E850と、専用モニタリングアプリ「NZXT CAM」を使って、システム全体とCPU単体の消費電力を測定している。

テスト9 消費電力比較

Core i9-11900K単体の消費電力はCore i9-10900Kより130Wほど高い。高い性能と5.1GHz動作と引き換えに従来モデルよりも消費電力は増加しているということが分かる。OCCTは日常的なパソコン利用に比べると非常に負荷が高く、一般的なユーザー環境でこの負荷が長時間続くようなシチュエーションはほとんどないと考えられる。一方の3DMark実行時の消費電力は一般的な高負荷時のものといえるが、こちらの結果はCore i9-11900KとCore i9-10900Kで大きな差はなかった。

ゲームに限らず性能は着実に進化。高品質なマザーボード、クーラーをお忘れなく!

第11世代となったCore i9-11900Kは、確かな進化を見せた。8コア16スレッドながら、10コア20スレッドのCore i9-10900Kよりも、Office系、クリエイティブ系、ゲームのいずれでも高い性能を発揮する傾向を確認できた。トレードオフとして発熱や消費電力の大きさはあるものの、新アーキテクチャやブースト機能の搭載は非常に魅力的だ。さらに、PCI Express 4.0にも対応し、最新のNVMe SSDやビデオカードを導入しやすくなった点も見逃せない。

第11世代 Core プロセッサーは今回詳しく取り上げたCore i9-11900Kのほかにも、さまざまな性能・価格帯をカバーするラインナップが登場する。ハイエンド志向の方からコストパフォーマンスを重視する方まで、幅広いユーザーが楽しめる春の自作パソコン市場になりそうだ。