「Define R6」は現在自作PC市場において最も人気のあるPCケースのひとつ「Define」シリーズの最新モデル。
ATX型ケース「Define R5」の次のナンバリングにあたります。
今回はこの大人気シリーズの最新モデルを総力特集!
自作PCの最新シーンを彩る新世代のPCケース、その実力を是非ご覧あれ!
「Define R6」という名前をきくと「Define R5」の後継モデル、ブラッシュアップが施された同系統の機種だと想像するユーザーも多いのでは
ないでしょうか。
しかし実際のところ、この「Define R6」は「Define R5」と大きくコンセプトを違える製品。外部こそそっくりではありますが、内部の作りに関しては全くの別ものといってもいいほど違う製品です。
この特集では「Define R5」と「Define R6」がどのように違うのかを比べ、その魅力に迫ります。
まず見ていくのは、「Define R6」の基本的なスペックです。
3.5"/2.5"ユニバーサルドライブブラケット | 6 | 対応電源サイズ | 300 mm |
---|---|---|---|
2.5ドライブ専用ブラケット | 2 | 対応グラフィックボードサイズ | フロントファンを取り付けた状態で最大440mm |
拡張スロット | 7 + 2 垂直設置 | 標準レイアウト | 300mmを超えるグラフィックスカードにおいて 最大幅155mm(電源コネクタ含む)。 |
対応マザーボード | E-ATX(幅最大285mm)、ATX、microATX、Mini-ITX | 対応CPUクーラー | 185 mm |
電源種類 | ATX | ケーブル配線空間 | 23 mm |
フロントポート | 2 x USB 3.0、2 x USB 2.0 | ケーブル配線グロメット | 有り |
搭載可能ファン | 9 | 固定用マジックテープ | 有り |
フロントファン | 3 x 120 mmまたは2 x 140 mm、 2 x Dynamic X2 GP-14搭載 |
ツールレスプッシュロック | 両側面パネル |
トップファン | 標準レイアウト:3 x 120または2 x 140 | 固定つまみねじ | HDDブラケット、SSDブラケット |
オープンレイアウト | 3 x 120/140 mm | 左側面パネル | Define R6シリーズ:吸音性産業用スチール Define R6 TGシリーズ:強化ガラス |
リアファン | 1 x 120/140 mm1 x Dynamic X2 GP-14搭載 | 右側面パネル | 吸音性産業用スチール |
ベースファン | 2 x 120/140 mm | 外形寸法(LxWxH) | 543 x 233 x 465 mm |
ダストフィルター | 下部ファン + PSUフロントファントップパネル | 脚/突起/ネジがない場合の外形寸法 | 535 x 233 x 448 mm |
対応フロントラジエーター | 120/240/360 mm140/280 mm | ケース重量 | 12.4 kg |
対応トップラジエーター | 標準レイアウト:- 120/240/360 mm (マザーボード部品高:最大35 mm) オープンレイアウト:120/240/360 mm- 140/280/420 mm (マザーボード部品高:最大35 mm) |
パッケージ寸法(LxWxH) | 560 x 347 x 650mm |
対応リアラジエーター | 120 mm | パッケージ重量 | 14.4 kg |
対応ベースラジエーター | 120/240 mm140/280 mm |
シリーズ通してのことではありますが、ATX型のケースとしては非常に高機能です。
多くのベイを設置可能でストレージを豊かに活用できる点や、大きなグラフィックスカードも問題なく搭載できる内部空間。
水冷クーラーの搭載可能位置が多い点などは「Define R6」でも変わりません。
では実際にどのような部分が「Define R6」で変わったのでしょうか。今回実機を触る機会を得たので確認してみました。
おおまかに変更になったのは以下の点です。
- ・物理スイッチによるファンコントローラが非搭載に
- ・付属ケースファンの増加(2基→3基)
- ・3.5インチベイの減少(8基→6基)(2.5インチベイの数は同様)
- ・電源カバーの搭載
- ・ライザーキット(本製品とは別売り。現在未発売)を使用することによってグラフィックスカードを縦置きに搭載可能
- ・強化ガラスパネルを採用したモデルやカラーバリエーションの追加(チタン→ガンメタル)
などなど。
寸法に関しては一見「Define R5」と変わらないように見えますが、奥行きなどが多少広くなっています。
では内部を詳細に見ていくことにしましょう。
「Define R6」は「Define R5」から大きくコンセプトを変えたとは言え、これまでシリーズで高く評価されていた静音性をばっちり備えています。
フロントパネル・サイドパネル・トップパネルいずれも高密度の防音素材を装備し、内部パーツの駆動音などが外に漏れるのを抑えます。
現在PCケース市場にある製品の中でも非常に高い静音性を誇る「Define」シリーズの長所はそのまま受け継がれていると言えます。
また、「Define R2」時代から導入されはじめた「ModuVentデザイン」は順当に進化。
冷却性を重視したい場合・静音性を重視したい場合とユーザーの好みに合わせてケースを調整することが出来るようになっています。
「ModuVentデザイン」図は密閉の状態。出荷時はこの状態に設定されています。
トップ部分に水冷ユニットを装着したい場合やハイエンドグラフィックスカードを搭載する場合のエアフロー強化などが実施できます。
大まかな違いの中でも述べた通り「Define R6」は「Define R5」と比較して出荷時の搭載ファン数が増加しています。
「Define R5」はフロント部分とリア部分に1基ずつファンが搭載されていたのに対し、「Define R6」はフロント部分に2基ファンを搭載(最大搭載量は変わらず)。
フロントパネル横のスリット部分の切込みに関してはほぼ変わらないサイズではありますが、出荷状態でも吸気が強化されたことで、購入後すぐでもハイエンドパーツを組み込み易くなったと言えます。
また、搭載されているケースファン自体も「Define R5」に搭載されていた「Dynamic GP-14」よりも進化した新製品「Dynamic X2 GP-14」を採用。
LLSベアリング搭載でMTBF(平均故障間隔)100, 000時間という高耐久モデルになりました。
この「Dynamic X2 GP-14」はすでに単品発売されている製品ではありますが、「Define」シリーズの出荷時に組み込まれるのは初のことになります。
「Define R6」最大の進化とも言えるのが、内部空間のデザインです。
「Define」シリーズで長らく採用されてきたスタンダードなATX型ケースの内部構造を一新し、よりユーザーが自由にユーザーの望むスペックを構成できるようになっています。
内部を見たときにまず目につくのは3.5インチベイや2.5インチベイを搭載可能な
ユニットです。
ユーザー任意の数をユーザー任意の位置に取り付けできるようシャシー部分から改良することで、より多角的な構成に対応します。
内部空間のデザインが刷新されたことに触れましたが、そのメリットが最大に生かされるのが水冷クーラーの搭載です。
「Define R5」でも、240mmや280mmなどの大型水冷クーラーを搭載可能でしたが、
「Define R6」では内部空間を刷新したことで「Define R5」よりも更に自由に、そして簡単に大型クーラーを取り付け可能になりました。
フロント部分やトップ部分には240mmや280mm、360mmサイズなどの大型クーラーを、リア部分には120mmや140mm型クーラーを取り付け可能です。
と、いうわけで、どれくらい自由に取り付けが可能になったのか、今回実機に触れる機会がありましたので検証を行いました。
まずは、干渉が気になるトップ部分です。
トップ部分への搭載に関して、240mm製品は「ModuVentデザイン」によるトップ部分のパネルを取り外すだけで他の設定は必要ありませんでした。
5インチベイのユニットもそのままで利用できます。
また、ヒートシンク付属の大型メモリに関しても物理干渉は基本的に問題なさそうです。
- 【検証を行ったマザーボード:MSI B350 TOMAHAWK】
- 【検証を行ったメモリ:CORSAIR VENGEANCEシリーズ】
- 【検証を行った水冷クーラー:ENERMAX LIQTECH TR4】
360mm製品の搭載時には5インチベイを取り外す必要がありますが、その他については240mm製品と同じく干渉などは気にしなくて良さそうです。
一方、280mm製品を搭載する場合は、周辺パーツとの物理干渉に注意する必要がありそうです。
280mm製品は240mm製品などと比べてラジエータなどユニットの厚さがあるため、今回検証に使ったようなヒートシンク付属の大型メモリを搭載すると、ラジエータが
物理的に干渉する場合があります(※マザーボードのスロット配置によって回避できる場合もあります)。
大型クーラーをトップ部分に搭載したいという場合は、周辺のパーツ選びにも気を付けた方がよさそうです。
- 【検証を行ったマザーボード:MSI B350 TOMAHAWK】
- 【検証を行ったメモリ:CORSAIR VENGEANCEシリーズ】
- 【検証を行った水冷クーラー:Corsair H115i CW-9060027-WW】
ヒートシンクがとくに付随しないメモリの場合は、クリアランスは狭いものの搭載は可能でした。
大型水冷クーラーをリスク少なく実装するにはメモリのチョイスに気を付ける、もしくはフロント部分への搭載がオススメです。
フロント部分への搭載に関しては、240mm同様、280mmも他の製品に干渉する可能性が低くなります。
加えて、ケース全体の奥行きが改善されたことで、フロント部分に水冷クーラーを搭載していても3.5インチベイなどを利用可能になりました。
これまで大型の水冷クーラーをフロント部分に搭載しようとする場合、多くのPCケースでベイユニットを外す必要があった(あるいははじめからベイユニットの無いデザインを採用していた)ため、これは大きな改善だと言えます。
ストレージの配置などを工夫すれば、デュアル水冷などの環境も構築可能です。
もちろん120mm製品や140mm製品も各ファンベイに取り付けが可能になっていますが、大型水冷クーラーを利用する際にはフロント部分を優先して使うのがリスク少なく運用できそうです。
「Define R6」が進化した点は冷却性や豊かな拡張性だけではありません。
内部のケーブルマネジメント……つまり配線が非常にしやすくなっている点にも注目です。
PCケースにおけるケーブルマネジメントへのアプローチに関してはNZXTのH700iなどが新しいラインナップとして優秀ですが、「Define R6」もハードウェアからそういった「配線しやすさ」にアプローチしています。
「Define R5」の時点でも組み立て易さで非常に評価が高かったわけですが、今回の「Define R6」では「Define」シリーズで踏襲されてきた非常に基本に忠実な造りから一新。
図のように、はじめから適切な配線が行われているという驚異的な設計を採用しています。
従来製品では、ケーブルをこのようにまとめて配置するのはユーザーが自らの手で行わなければなりませんでしたが、
「Define R6」ではあらかじめメーカーが適切な処置を行っているため、ユーザーは任意の場所にパーツを設置し、そこに近くのケーブルから配線を行うだけでよくなっています。
また、このような配線…現在の自作PC市場では非常にスタンダードな裏配線と呼ばれるマザーボード裏にケーブルを通す配線方法自体が、より行いやすい工夫をなされています。
具体的には「Define R5」にあったマザーボード裏のスペースがフラットになりました。
また、内部空間に電源カバーが追加されたことにより、電源部分含めてのケーブルの露出が最小限に抑えられます。
これはH700iにも見られた方法ですが、これにより後述するガラスパネル採用時のビジュアル的な美しさをケーブルで邪魔することがなくなるというメリットがあります。
これは「Define」シリーズでは今回の「Define R6」にて初の試みになります。
さて、ここまで「Define R6」のPCケースとしての性能を見てきました。しかし「Define R6」はPCケースとして優れているだけではありません。
今回のラインナップから、「Define R5」まであったアクリルパネルモデルに替わり『強化ガラスパネル採用モデル』を投入。
昨今の自作PC市場で常に人気のあるLEDライティングなどを意識した『ビジュアル的にも美しいパソコン』にもアプローチを行っています。
強化ガラスパネルは非常に美しく内部を映し出してくれるため、これまでアクリルパネル採用モデルなどで好んで使われていたような「ビジュアル的魅力の強いPCパーツ」の魅力が際立ちます。
加えて、今後発売が予定されている純正ライザーキット(本製品とは別売り。現在未発売)駆使することで、グラフィックスカードを縦置きに配置することも可能に。
これにより、スタンダードな内部配置PCケースの場合は外部に対し側面が露出していたグラフィックスカードの、ファン部分などをビジュアル的に楽しむことが可能になっています。
現在はグラフィックスカードも光らせることが出来るアイテムに名を連ねているので、この機構によってより深くグラフィックスカードという存在自体を楽しむこと出来るようになっています。
↑ブラケットを固定しているバーを緩めて挟み、固定します。
ただし、このライザーキットを駆使しての配置はグラフィックスカード自体の冷却機構に影響のある場合があるので、ハイエンドグラフィックスカードを搭載する場合は注意が必要です。
また、前項で書いた通りメーカーがあらかじめ美しい配線を行えるような構造にしているため、内部がよく見えるガラスパネルでも配線によってビジュアルを損なわないようになっています。
これら多くのハードウェア的な工夫によって、PCパーツのビジュアル的な魅力溢れるPCとして完成させられるようになっています。
「Define R6」は明確に静音重視を謳うPCケースでありながら、こういったビジュアルに対する工夫を多数行う非常に珍しいガラスパネル採用モデルです。貴重な選択肢だと言えるでしょう。
「Define R6」は今後、Fractal Design Connect D1 USB3.1 Gen2 Type-C アップグレードキット(本製品とは別売。現在未発売)を使用することで、
フロントポートに超高速なファイル転送と高速充電が可能なUSB 3.1 Type Cを搭載することが出来るとしています。
USB 3.1 Type Cはすでに普及が始まっている次世代ポート。これを増設出来るのは大きなメリットです。
次世代規格に対応することで、長く快適に使用することが出来る製品に仕上がっています。
驚異的な静音性を取り入れながら、冷却を疎かにせず、ハイエンドパーツを組み込むことが可能な上にビジュアルも重視することが出来る。
「Define R6」はまさに新世代のPCケースとして申し分ない存在だと言えるでしょう。
新しいPCを組み立てようと思う時、是非選択肢のひとつとして検討してみてください。